Dmitry Zharkov & Olga Kulikova
ディミトリ & オルガ

2019年夏、福岡のダンス教室が主催されたパーティがありました。そのスペシャルゲストダンサーが、ディミトリさんとオルガさんでした。大変申し訳ないのですが、私は日本のトップダンサーのことも世界のトップダンサーのことも殆ど知識がありません。YouTubeなどの社交ダンス動画を観ていても「すごいな〜、綺麗だな〜」と思うのみで名前までは頭に入っていません。なので、パーティでお会いするまでお二人のことも全く存じ上げませんでした。ごめんなさい。
このパーティを主催された先生から「通訳ヨロシクね〜、簡単な挨拶だけだから〜。」と軽ーく頼まれていたので、こちらも軽ーい気持ちで「はーい」と引き受けた次第でした。
他が早く動いている時、二人はゆっくり動く。
時々二人でふっと見つめ合うそのタイミングが表現をさらに豊かに。
何があっても互いを大切に踊る。
リハーサル
パーティ当日の朝。ジャージ&素顔のお二人が会場に到着。通訳ですとご挨拶した後、ディミトリさんから変わった形のUSBを預かり音響係さんにお渡ししました。スタンダード5曲をそれぞれのエンディングでどのタイミングで曲をリピートするのか細かく指示を出されていました。その少しの間、オルガさんはストレッチされたりしていました。リハーサルは軽く体を動かし場所を確認しながら踊られて終了。4曲目の後にきちんと着替えてお客様に挨拶をしたいとの要望を話され、本番の時間を確認してリハーサルは終了しました。
本番前、司会者の方にゲストショーを盛り上げるために ”ありがとう Спасибоスパシーバ ”と”素晴らしい хорошоハラショー ”を場つなぎのためになればとお教えしました。と言っても直前にヴァレリ先生に教えてもらったにわかロシア語です。加えて教えてもらったのが、ロシア語に聞こえる危険な日本語。それは普段よく使う”そっかー”でした。この音はロシア語で悪い言葉なのだそうです。
スペシャルゲストショー
パーティ最後のメインイベント、スペシャルゲストによるデモンストレーションダンスです。出番の少し前に二人が会場に入り控え室へ。控え室と言っても会場の隅にパーティションがあるのみで横からは丸見えです。追加でミネラルウォーターを2本用意。オルガさん、ドレス5着をハンガーに掛けて、筋膜リリース用ローラーされていました。お二人とも静かに本番を待って、いよいよ本番です。出るタイミングを司会者、主催の先生とゲストさんの間に立ってチョコチョコ通訳しました。
いよいよ二人の出番です。
お二人を知らなかった自分を愚か者だと痛感しました。日本のプロ選手の社交ダンスショーを観て「わあ、すごーい!」とはしゃいでいた記憶はリセットを余儀なくされました。世界レベルとはこれかーーーー!!目の前のお二人の踊りは桁違いに素晴らしくて自然に”ハラショー!!”と叫んでしまいました。
曲と曲の合間は司会者さんや先生のMCです。華やか&涼しげな笑顔で踊るオルガさんは汗びっしょりです。1曲毎にドレスをチェンジするため、息を整えながら早着替えです。会場の方が用意してくださったおしぼりで背中の汗を拭いながら、着替えされる彼女を手伝わずにはいられませんでした。最初は遠慮されていましたが、なんちゃってロシア語を英語に交えて駆使しているうちに少し打ち解けてくださってお手伝いさせていただけました。”Don’t worry. I am a lot older than you. you can call me бабушка (私はずっと年上、おばあちゃんと呼んでいいから)” など、軽口を叩いたら表情も和らいで、一番お二人にウケたのは、ヴァレリ先生に教わったロシア語に聞こえる危険な日本語でした。
主催者の先生がMCをされた時には、スパシーバとハラショーを観客の皆さんと練習したりパーティはヒートアップ。控え室で着替えをしていたお二人にも大声のロシア語は聞こえていたので、大歓迎のなんとも温かい雰囲気はしっかり伝わっていたと思います。
4曲目が終わり、挨拶が始まりました。通常ゲストさんのスピーチはご挨拶2~3分程度です。が、ディミトリさんのスピーチはなんと15分以上。オルガさんとの出会い、二人で乗り越えてきた困難な時期、そして二人を花開かせてくれた師との出会いから世界で活躍できるようになるまでのこと等々。観客の皆さんや先生方はうっとり&興味深々耳を傾けて至福の時間でした。が、同時に通訳泣かせの時間でもありました。有名な先生の名前がよく聞き取れず通訳に困難したり。スピーチ後半は、ディミトリさんがどれだけオルガさんを愛しているか、大切にされているかが伝わる温かい時間でした。
パーティ終了!
最後の曲を踊った後、パーティフィナーレ。そしてパーティ終了。

終了後、気さくなお二人は、お客様や先生方と丁寧に写真撮影に応じていました。最後の方が撮影した後、私も一緒に写真を撮っていただきました。リハーサルの時とは打って変わってすっかり打ち解けて、ディミトリさんは控え室で着替えが終わってもずーっとお話が止まりませんでした。パーティ前日に食べた寿司が美味しかったので今夜も食べに行くんだ!とか、中国で働いた時の思い出、世界中で仕事をした際の各国納税額の違いなど色んなことを話されていました。お二人のショーの中でオルガさんが一直線に走ってディミトリさんに飛びついてそのままグルグル回る振付があったのですが、ディミトリさんが「ああ会場狭かったー!」というので、私が「会場が広かったら、オルガさんもっと長い距離をドレスで走らないといけなくなるから大変よ」って言ったら、「オルガは喜んでガンガン走るから大丈夫!!」本当に気さくで元気真面目な印象の男の子でした。オルガさんはディミトリさんの話を笑顔で聴きながら、私とのやりとりの中でとても礼儀正しく言葉使いも丁寧で本当に素敵女子だと感じました。「将来ゼッタイに今以上の素晴らしい女性になる!」と勝手に確信しました。
軽ーい気持ちで引き受けた通訳ボランティアでしたが、貴重な体験と素晴らしい出会いの機会となりました。通訳依頼をしてくださった先生に感謝です。
後日談
興奮のパーティから早1年。2020年は沢山の競技会が新型コロナの影響でキャンセルや延期となりました。時折”お二人は元気かなー?”と思っていたところ、ディミトリさんのFacebookにロシアチャンピオンになりましたー!と投稿がありました。世界が厳しい状況の中、元気なお二人の姿を見て心から嬉しくなりました。もちろん「超いいね」しましたよ。

7回目のロシアチャンピオン、おめでとうございます!
またいつか来日してください。
もっと勉強します。いつでも無料通訳いたします!
давай!!